1本だけの歯

 

我々は、風邪を治すことが出来ます。ウィルスに傷つけられた細胞を、新しいものに取り替えることが出来ます。あるいは、髪が抜けたら生えてくるのを待つことが出来ます。もちろん決定的にハゲが決まってしまえば話は別ですが、若いうちならいくらでも生えてきます。それは替えがあるものなのです。転んで肘をすりむいても、やがて傷はカサブタが出来て治っていきます。1、2週間もすればすっかり治って、余裕しゃくしゃくです。皮膚の組織が生まれ変わり、新しく肌を形成したのです。しかし、歯は違います。歯は、いったん抜けてしまえばもうおしまいです。生えてくることはありません。子供の頃に一度、乳歯から永久歯への生え変わりを経験したあと、私たちは再び歯の生え変わりを経験することはないのです。だからこそ、私たちは歯を大切にしなければならないと教えられるわけです。そして、歯医者さんの方でも、出来れば歯を抜かなくても治療できるようにということで、虫歯などの病気の研究を続けています。

虫歯を守る根管治療

 

根管治療は、虫歯など、歯を蝕んでいく病気に対処するために生まれた治療方法で、きわめて現代的な、最先端の治療であると言えます。ここで言う「根管」というのは、「物事の本質的な、大事な部分」という意味の「根幹」と、字面は似ていますが、意味が違います。根管というのは歯を構成する部分のひとつで、文字通り根もとにある管のことを意味しているのです。歯医者さんの根管治療とは、ここを消毒してキレイにし、病気の原因を除去するというものになります。大昔は、虫歯になれば歯1本まるごと引っこ抜くしかありませんでした。しかし、今では治療が必要な部分にピンポイントに治療を行い、出来るだけまるごと引っこ抜かなくてすむような治療を、行っているのです。

根幹治療の仕組み

クリニック 医師

根管治療というのは、たとえば「根本的に治療する」みたいな抽象的な事柄を意味しているのではありません。字面を見てみるとそんな感じがしないでもないのですが、そうではないのです、根管治療とは文字通り「根管」という器官を、治療することを意味しています。根管は、歯の根もと部分にある管状のもので、その管の中には歯の神経が通っています。虫歯が進んでいくと、最終的にはこの歯の神経が蝕まれ、すさまじい痛みの原因となってしまいますが、根管治療では歯を抜かないまま、根管だけを触って神経を抜き取り、抜き取ったところに薬を詰め込みます。その薬によって、虫歯菌が歯の神経に再び攻め込んでくることがないようにするのです。

再発を防ぐためには

 

虫歯の治療は、単純なように見えて実に繊細なものです。それはミクロン単位の世界で、ミスを許さないものです。ちょっとしたズレや見落としが、虫歯菌による攻撃の再発をさそってしまうことがあるのです。歯に詰め物をして虫歯の治療完了……と言っても、詰め物にちょっとズレがあれば、そこから虫歯菌が入り込んできてまた再発するという可能性があります。ズレがあってもいけないし、詰め物などでしっかりと密閉せずに空気が入るような余地を残しておくと、空気から細菌がまた歯の中に忍び込み、虫歯を引き起こすこともあります。根管治療は、そのようなことを起こさないようにするために、行うものです。歯に微細な穴を開け、根管から神経を引っこ抜き、薬を詰め込み、密閉剤を隅から隅まで流し込んで固めてしまうのです。

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